PATHOLOGY 01 病理学とは

病理学(Pathology)は、生命の本質を深く見つめ、疾患の本態を科学的に解明することを目的とする医学の根幹を成す学問領域です。「病(やまい)の理(ことわり)」を探求し、疾患がなぜ・どのように起こるかを形態学的・分子生物学的手法を用いて明らかにします。
病理学には「疾病学」としての側面と「病理学者」としての側面があります。すなわち、患者から採取された臓器・組織・細胞・剖検材料の詳細な肉眼的・顕微鏡的所見を通じて、疾患や病態についての最終的な診断を提供し、治療方針の決定に不可欠な情報を提供します。一方で、様々な研究手法を駆使し、病気の発症・進展機構を解明することを目指す研究者としての側面も担っています。

PATHOLOGISTS 02 病理医の役割

病理医は「医師の医師(Doctors’ doctor)」とも呼ばれ、臨床医が採取した組織や細胞を顕微鏡で精査し、診断名・病期・治療効果の判定など、治療の根拠となる情報を提供します。
現代医療において病理診断は、良性・悪性腫瘍をはじめとするあらゆる疾患の確定診断に不可欠であり、「病理診断なくして治療なし」といっても過言ではありません。病理医は直接患者と接する機会は少ないものの、臨床医との緊密な連係プレー(ディスカッション)を通じて、その診断は患者の人生に大きな影響を与える重要な役割を担っています。

主な役割

組織・細胞の診断

患者さんから採取された組織や細胞を顕微鏡で解析し、疾患の確定診断を行う。また手術で切除された臓器の進行度や追加治療の必要性、標的薬の適応の有無を評価する。

術中迅速診断

手術中に即座に診断を提供し、術式や治療方針の決定を支援する。

剖検(病理解剖)

死因の究明や生前の治療効果を検証することで、未来の医療の質向上に貢献する。

EDUCATION 03 教育における役割

病理形態学分野は、医学部における病理学教育の中核を担っています。
学生が疾患の本態を深く理解し、将来どの専門科に進んでも病理学的思考を活かせるよう、体系的な教育を提供します。

アイコン担当科目

  • 組織・細胞の診断
  • 臨床病理学1
  • 病理組織実習 1(医学部医学科2年)
  • 自己開発コース
  • 統合医学チュートリアル
    (医学部医学科3年)
  • 臨床実習 1(医学部医学科5年)
  • 医学英語(医学部医学科2年〜5年)

アイコン教育方針

形態学的観察力と論理的思考を養い、基礎医学と臨床医学を橋渡しする人材の育成を目指します。少人数グループによる実習や症例カンファレンスを通じて、実践的な診断思考を鍛えます。
当病理学講座における教育の柱は「次世代を育てる教育」です。 臨床においては、豊富な症例数を扱い、若手医師が第一線で多彩な診断経験を積める環境を整えています。また研究面では、患者さんからいただいた貴重な検体を基に、「人の顔が浮かぶ、臨床に還元できる研究」を重視。がんをはじめとする疾患の克服を目指しています。 医学生や初期研修医の皆さんが、これまでの臨床知識を俯瞰し、形態学(カタチ)の謎解きに挑む面白さを実感できるよう、丁寧な指導体制を構築しています。

教育:基礎から専門医まで、
連続性のある学び

私たちは、病理学を単なる知識の暗記ではなく、「病気を深く理解するための学問」として捉える教育を実践しています。

医学科教育

講義や病理組織実習を通じて形態から病気を理解する力を養います。病理解剖やCPC(臨床病理検討会)への参加は、患者さんの病態を全身的・総合的に考える姿勢を身につける貴重な機会となります。

卒後・大学院教育

卒業後は病理専門医や細胞専門医の取得を目指し、実践的な診断能力を高めます。大学院では、診断で培った観察力を土台に、論理的思考力と研究遂行能力を備えた、次世代の医療に貢献できる人材を育成します。

PRACTICE 04 医療における役割

当講座は山口大学医学部附属病院と密接に連携するとともに、地域の医療機関における病理診断部門を担うことを通じて、地域医療を支えています。山口大学医学部附属病院病理診断科における多数の症例の病理診断を担当するとともに、術中迅速診断による外科系診療科との連携と、医療の安全性・確実性向上に貢献しています。
また、剖検(病理解剖)を通じて死因の究明と医療の透明性確保に努め、CPC(臨床病理カンファレンス)を通して、臨床各科と協力して診療の質の精度向上と医学教育に貢献しています。

DIAGNOSIS 05 病理診断について

病理診断は、臨床医が採取した組織・細胞の標本を作製し、病理医が顕微鏡を用いて微細な形態変化を解析することにより、疾患の確定診断を行うものです。必要に応じて免疫組織化学染色・分子生物学的手法を組み合わせ、精度の高い診断を実現しています。

病理診断で扱う代表的な標本例

HE染色標本(組織診の一例)

組織診(生検・手術材料診断)

内視鏡や針生検などで採取した組織片、あるいは手術で切除した臓器・腫瘍を薄切・染色し、顕微鏡で詳細に観察します。腫瘍の良悪性・組織型・進行度(病期)・切除断端の評価など、治療方針決定に直結する情報を提供します。

LBC標本(細胞診の一例)

細胞診

喀痰・尿・腹水・乳腺分泌物・子宮頸部擦過物など、比較的低侵襲的に採取できる検体中の細胞を観察します。疾患のスクリーニングから病変部の精査に至るまで幅広く用いられます。特に悪性腫瘍の早期発見に重要な役割を果たします。

免疫染色標本(免疫組織化学染色の一例)

免疫組織化学染色

必要に応じて免疫組織化学染色を行い、特定のタンパク質の発現を確認します。
腫瘍の鑑別や分類、治療標的の同定などに役立ち、個別化医療の実現に貢献します。

迅速診断(術中迅速病理診断)

手術中に採取された組織を凍結切片として迅速に標本化し、約15分の間に病理医が診断を報告します。術式の決定(切除範囲・郭清の要否など)に直接影響するため、外科医との緊密な連携のもとで行われます。

迅速診断 (術中迅速病理診断)の流れ
アイコン

組織採取から診断報告まで、約15分で行います。

手術方針の決定に直接影響するため、外科医との緊密な連携のもとで行われます。

種別
組織診
細胞診
迅速診断
検体
生検・手術材料
喀痰・尿・擦過物 等
術中採取組織
種別
組織診
細胞診
迅速診断
報告目安
3〜7 営業日
3〜5 営業日
15〜30 分
種別
組織診
細胞診
迅速診断
主な目的
確定診断・病期評価
病変部のスクリーニング・早期発見
術中術式決定